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みかん 旅情編

梅雨も終わりがけに達し、もうすぐ本格的な夏に入ろうとしている陽の日差しが背中を照りつける。宇野駅を出発した連絡船は丁度一時間をかけて到着する。私は今、高松駅の浅橋にたどり着いた所だ。これからむこう側に有るホームに向かい、長い旅の続きに入る事となる。

乗りこむ列車は特急・南風号。すでにホームに入線済みの列車は乗客を乗せ始めている。車両型式はキハ181系と呼ばれるものだ。5・6年程前に、「南風」を高速化するために導入されたらしい。しかし、今時1000km余りを7時間半ほどで結ぶ超特急も有るというのに、終点の中村までせいぜい200kmの距離をこの先4時間余りもかけて行くと思うと、我ながら呆れる所である。

座席は2人がけの席に向かい合って座る「ロマンスシート」と呼ばれる形式である。自由席に乗り込み、空いている席に着くと、向かいには二人連れ母娘がすでに座っていた。小学校あたりはほんの2・3日前に夏休みに入ったばかりである。多分母親の実家へ帰省する所であろう。娘さんの年の頃は7・8歳くらいか。つるんとした丸い頬に、大きくてつぶらな瞳。髪の毛は少しウェーブのかかった栗色である。服装は、淡い水色でフリル付きのふわっとしたものである。文字どおりフランス人形のようだ。
その子は出発まで待ちくたびれたのか、席を立ち上がり、車窓に顔をよせて何気なしに外を眺めていた。しかし、彼女はふと、顔をこちらに向け、私に向かって微笑んだ。私もそれにつられて微笑を返した。

出発から1時間。松山方面との分岐点であり、四国山脈への入り口となる多度津の駅を過ぎた頃。弁当や飲物の車内販売がやってきた。「そういえば朝から何も食べてないな」万年金欠の中での貧乏旅行であるが、まだ目的地までかなり時間がある。ここで腹ごしらえをするため車内販売のワゴンを止めた。

ワゴンの中を覗く。定番の幕の内が2・3種類。ティーバックで入れたプラスチック容器入りの緑茶。緑色で真ん中がくびれた瓶がおなじみのコカ・コーラ。いつもの事だが、あまりかわりばえのしないメニューである。
その中に私の目を引く物が映った。それは長さが20cm程で、一見すると橙色の丸い棒にも見える。所々にくびれが有り、その物体は凍っているようにも見える。凍っていて当然である。その物には「冷凍みかん」と書かれた紙が入っていたのだから。

冷凍みかんは赤いナイロンのネットに5つ縦並びに入っていた。みかん自体は何もめずらしいものでは無い。冬には私も炬燵の中でよく食べているから。しかし、いくら冷凍とは言え、この暑いさなかにみかんを見るのは初めてである。私はもの珍しさから冷凍みかんを1袋手に入れた。

ネットの中からみかんを1個取り出してみる。やはり凍りついているので外の皮はむくことが出来ない。冷たい思いをしても仕方がないので、しばらく置いておく事にした。車内には冷房などという洒落た設備も無いので、みかんはすぐに融けるだろう。

解凍している間、時間もたっぷり有るので、みかんを観察してみる事にした。大きさはゴルフボールよりも少し大きめ。しかし、色はやや黄みが強いオレンジ色で、何より傷が無い。私はみかんをよく食べるほうではあるが、大概安いものを食べているせいか、もっと色が悪く不格好なものしか見たことがない。この冷凍みかんのために良品が選りすぐられている。これは加工した果物でもおいしく食べられるようにするための配慮なのだろう。なかなか贅沢ではある。

みかんの皮に付いていた霜も完全に消えた頃、私はみかんをむき始めた。外側の皮をむき、中の実を一袋はがしてみる。中身はまだ凍っている。しかし、氷のように冷たく固いわけでは無く、しっとりとしてひんやりとした感じである。

国鉄・土讃本線の中でも風光明媚とされている吉野川の流れを眼下に望みながら私は先ほどむいたみかんを一口頬張った。かき氷の冷たい感触と、みかんの甘酸っぱさが口の中でひろがった。向かいの席でさっきまで外を見つめていた女の子は、こっちを不思議そうにして見つめていた。ディーゼルエンジンの野太い音を響かせながら列車は険しい山あいを進んでいく・・・。

私は、とある駅の売店で、これを見ながらそのような情景を思い浮かべながら立っていました。

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