これは反戦映画ではない
泣ける話では無い、恐怖する話である
教育は大切
こんにちわ、Ki-Tsu-Neです。
火垂るの墓は、'88年4月に劇場公開されたアニメーション映画です。当時はとなりのトトロと同時公開され、主人公である子供2人がどちらとも死んでしまうストーリーのせいで、トトロ目当てで劇場に来た沢山の子供達が泣き出したという話が残っています。
私自身はこの映画を見たことは有りませんでした。背景が神戸大空襲後である事と、親を失った子供が貧困に追い込まれる話だと聞いて、何となく反戦の話だと思っていました。
実際は全く違いました。確かに主人公の子供達が転落していくきっかけは空襲で焼け出された事と、母親を失った事です。けれども、その先は、戦争が有っても無くてもこの子達は自滅しただろうと思わずにはいられません。
何故、彼らは自滅しただろうと考えたか。これからずらずらと書き並べていきます。
まずは、焼け出された後にたよって行った親戚の家で、主人公の一人である中学生のおにいちゃんは、次の行動を起こすでも無く妹と2人で無為に時間を過ごします。それをこの家の主であるおばさんにたしなめられると、仕事に就くでもなく近くの学校に通うもせず近くの防空壕に移り住んでしまいます。食べ物に困ると、このおにいちゃん。近くの畑から作物を盗んだり、空襲が有ると、空き家になった所に入り込み、火事場泥棒を働いたりします。しかも、物の価値が判らないのか、盗んだ着物が明らかに安物なのに「親の形見」だと言って売りつけた上、断られる始末。おまけに銀行へ親の預金をおろしに行った所で初めて戦争が終わった事を知る程の意識の低さ。
物語に出てきた部分を並べるだけでもこれだけの問題を起こしています。たしかに、私は子供に対してかなりきつい事を書いているのかも知れません。しかし、
- この子達の父親は、海軍の、しかも駆逐艦に乗る将校である。
- 母親が被災した際に付けていた指輪には、
ドロップのように大きな石が付いていた(演出かも知れないが)。
- この家族は、父親が職業軍人なので、
生活に関しては間違いなく手厚い保護が有った筈。
等々
要は、この子達は明らかに裕福なエリートなのです。しかも、空襲によって着の身着のまま放り出された訳ではなく、一定の財産も持っていたのですし、海軍にでも事情を話せば生活援助も受けられていた筈なのです。
私には、このおにいちゃん。教育に失敗したNEETにしか見えません。14歳という年齢ならば、たとえ表面的にしか判らなくても世の中をもっと知らなくてはいけません。知識にしても余りにお粗末です。戦前・戦中の頃なら義務教育の期間は6年。昭和40年代以降と違い、12歳で社会に出ていく子供も多かったでしょうし、社会のリーダとして世に出るのならば尚の事、市井の様子わ解っているべきでしょう。
この映画が公開されてから20年。今まで何度も繰り返しTVで放送されて来ましたが、私にはその事に驚きを隠せません。ちゃんとストーリーを読むと、親が教育に失敗した無知で無軌道な子供が自滅するというものであり、普通に考えると視聴者が何度も見たくなるとは思えません。しかし、この映画、本質は反戦映画では無い分、これからの時代に強く訴えかけていく事になるでしょう。
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